●vol2. 手作り服はダサいのか?

 以前、手作り関係の掲示板にこのような主旨の書き込みをしたら、けっこういろいろな意見がありました。「手作りの楽しさ、素晴らしさは大好きだけど、どうしてもそれを感じる」というむねの意見もいくつかあったのです。
 わたしも、手作りが楽しくてやっているわけですから、決してそれを否定するわけではありませんけど、例のシュテパラゆえに、全体のバランスが見られなくて失敗してしまうことがよくあると感じています。以下は、自分がおちいりがちと感じている手作りゆえのポイントです。

●一点ばかりに目がいってしまう
 既製服を買うときは、ぱっと服を見て、「この服と、手持ちのどれを組み合わせようかな」と考えるのが普通です。でも、手作り服のときは、その布が好き、という理由で買ってしまう。あるいは、デザインを考えたり、つけるボタンを考えたりしているだけでエネルギーを使い果たしてしまい、コーディネートを考える余裕がなくなってしまうのです。  とくに、わたしは糸の番手や手触りのよさだけで布に惚れてしまうことが多いので、しばしばこの問題を起こします。

●得意、不得意分野が違う。
 手作り(ないしは「お誂え」)の服というのは、「揃える」ことが得意です。スカートと上着の一部(たとえばバイピング)の色を揃えたり、服と共布で靴やバッグを作ることもできます。皇室の人が着ている服というのは、そういうおしゃれが多いですよね。
 反対に、既製服というのは基本的には単品で売られているものです。だから、「お誂え」に比べると、ある意味ではどうやってもミスマッチだともいえます。それをいかに組み合わせるかと言うところに、おしゃれの面白みが生まれてくるのが既製服です。「スタイリスト」という職業は、既製服が主流になってから生まれた仕事です。それ以前は「デザイナー」しかいなかったのです。
 だから、単品コーディネートがあふれている街のなかに、「お誂え」で作った服〜上と下が同柄だったりする〜がぽんと入ると、思った以上に目立つことがあります。
 わたしはどちらかというと単品コーディネートが好きだったはずなのに、自分で服を作っていると、ついやりたくなるんですよね。とくに布が余ったりすると。「おしゃれ心」より「ケチ根性」で服作るからかもしれません。

●型紙や技術の問題
 既製服って、縫製が悪かったりボタンがすぐとれたり、「おいおいこれでもプロかよ」って思うことも多いですけど、パターンはやっぱりよくできてるんですよね。反対に言うと、「パターン」というのが、ホームソウワーにとっての大きな関門といえるかもしれません。市販の型紙や本についている実物大型紙はとっつきやすいので、ビギナーのときは嬉しいけど、シュテパラになると飽き足らなくなってしまいます。型紙を自分で起こす場合、自分の身体に合わせすぎて、かえって服のバランスが崩れてしまうという問題もあります。

●試着ができない。
「好きな服」と「似合う服」というのは必ずしも一緒じゃないのですよね。既製服だと気軽に着てみて、「あ、思ったより似合わないや」と手放すことができるのですが、手作りだと、いっぺん「こう」と決めて縫いだしたからには、とちゅうでデザイン変更というわけにはなかなかいきません。
 とくに、初心者のうちは、布を見ただけでできあがりをイメージすることが苦手です。布の状態で見たときよりジミになてしまったり、ハデになってしまったりします。

●ニットが縫えない。
 最近はロックミシンが普及してきたのでそうでもないかもしれませんが、裁つのも縫うのもやっぱり難しい。型紙作るのも難しいです。布の伸び方が1枚1枚違いますし。
 手作り服で暮らそうとすると、カット・ソーがワードローブからどんどん消えてしまいます(笑)。

●広告業界との戦い
 既製服をめぐるアドバタイジングというのは、それはそれはすごいものがあります。ごく普通の服でも、カッコいいモデルが着て腕のたつカメラマンが写真を撮ったりすると、すごくカッコよく見えてしまうときがあります。ショップのディスプレイだって、とってもカッコいい。一つのお店は一つの「世界」だったりするんですよね。それらはそれらで奥が深く、作っている人にとってはエネルギーをかける甲斐のあるものだろうと思います。

●甘え
 汗水たらして作ると、ちょっとの失敗点に甘かったりする。「手作りはすばらしい」というのは嘘ではないけど、自分のなかで、失敗に目をつぶるいいわけとして使ってしまうことがある。伴侶や子ども(いないけど)にこれやったら押しつけだなと思う。

●ブランドロゴの問題
 実はこれが結構大きいんじゃないかと思っていたりする。既製服のなかには、ごくふつうのシャツだったりTシャツだったりするのに、胸に「CK」だの「EA」だのと書いてあるだけで、カッコのついてしまうものが結構あります。ロゴデザインというの登録商標社会にあってはドル箱なので、各メーカーは身体をはって(?)一生使えるデザイン性の高いロゴを生み出しています。
 これに対して手作り服というのは、あくまで服のデザインだけで勝負していかなければなりません。それに、ホームソーイングでは、あらかじめプリントされた布を縫うことはできても、「ロゴ入りTシャツ」みたいなものを生み出すことは難しいのです。刺繍だと手間がかかりますし、手描きは絵心がいります。手作り服は、「ワンポイント」に弱い、というか、それは「縫製」とは別の才能になってしまうのです。
 でも、この問題については、実はパソコンが新たな選択肢を作っていくのでは?と と思っています。近頃では、「お絵かきソフト」を使えば、自分ブランドのロゴをデザインして、それをアイロンプリントにすることもカンタンにできるんだそうですね。オリジナルタグネームなども、みなさんとても熱心に作っている模様。「デザイナーズ・ブランド」に負けない「究極のプライベート・ブランド」が、これからどんどんできていくのかもしれません。

参考リンク先
リトルヒップ

次のノートへ   一つ前へ   ノートの目次へ   「ISL」トップへ