●vol.22 旧・はじめに2

 この一年で、わたしと、わたしを取り巻く世界は、ほんとうに大きく変わった。
 昨年の今頃なんて、仕事先のめどもたたず、自分の可能性も信じられず、「洋裁が好き!」とも自信をもっていいきれず、(どうもやらなくていい苦労をしているような気がしていた)、自分の思うような作品ができず、HPは閑古鳥。ネットの友だちも少なくて、しみったれてた。

 しかし今や、生活をめぐる環境は大きく変わった。「自分がどういう服を作りたいのか」が少しずつわかってきて、また、既成のパターンを販売するショップの台頭などにより、服が作りやすくなった。仕事も完全復帰、やりたいことがやれて、さらに評判もよい。

 さらに、「非拘束婚」というあり方は、もはや一つの生き方として社会に認知された。アダルトチルドレンへの偏見も、この一年でずいぶん是正された。

 1980年頃から、フェミニズムは、大発見をした。それは、「依存する人を責めないことば」というものの発見である。
 自立を求めない人々に対して、「そうしなければ死んでしまう人がいるのだ」という考え方が確立された。人はときとして、自立をめざした方が、依存して生きるより、「死」に近くなってしまう。「生き残りのための依存」という選択肢が受容された。
 この考えが末端の私の所にとどくまで20年ぐらいかかったが、これによって、「フェミニストというのは、誰かの生き方を排除したり否定するものではない」というのを、明確に説明できるようになった。
 どうやら、そのことが、このサイトを運営していくことによって、ずいぶん伝わったらしいという手応えがある。これは嬉しいことである。

 「石ともソーイングラボラトリー(ISL)」は、「服作りのサイト」ではなく、「服作りを通して自分を大切にすることを考えるサイト」であるというスタンスは変わらない。
 身体(ボディ)、心(マインド)、霊性(スピリット)に向き合いながらの服作りという姿勢も変わらない。
しかし、そのことを、もはや声を大にしていわなくてもいいほど、私を取り囲む世界は成熟に向かっている気がする。「だってそんなの、当たり前のことじゃん」。

 21世紀が始まって10ヶ月ほどたったけど、あなたの心は、平和的成熟を続けていますか?
 喜びも悲しみも、嘆きも怒りも、乳と蜜の流れ出る大地のように、豊かにわき出す心でありますように。

(2001.10.25)  
   

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