●vol.10 ソーイングアクティビスト  〜カトウ・ヨウコさんのこと〜

 カトウ・ヨウコさんは、1992年、マサチューセッツ州ノーサンプトンで、自分の娘と孫を殺されました。加害者は娘の未入籍の恋人で、孫の父親でもありました。台所に逃げたふたりを、男はディッシュウォッシャーのなかにあったナイフで二十数カ所メッタ刺し、というむごい事件だったそうです。
 ヨウコさんは、かつて自分もドメスティック・ヴァイオレンス(日本語の「家庭内暴力」は子から親への暴力をさすのが一般的なので、夫や恋人からの女性への暴力をさすときはこのことばを使う。DV。)の被害者であったのに、娘にも同じ運命を味わわせてしまったことを激しく悔やみ、その後の人生をDV撲滅のために精力的に活動してきました。マサチューセッツ州には「メンズ・リソース・センター」といって、女性に暴力をふるってしまう男性のカウンセリングプログラムを実施している機関がありますが、ヨウコさんはこのセンターの理事をなさっています。身体一つで夫の暴力から逃げてきた女性の自立を支援する奨学金も出しています。98年には、「アウォード・ウーマン・オブ・マサチューセッツ」にも選ばれました。
 どうしてISLにこんなことを書くかというと、ヨウコさんの本職は、オーダーメイドのクチュリエさんなんです。俳優のモーガン・フリーマンが『ドライビング・ミス・デイジー』でアカデミー助演男優賞をとったとき、彼はヨウコさんが作ったタキシードを着たとのことで、それから、ハリウッドでも知られる存在になっていたそうです。
 わたしは、98年に二度、ヨウコさんにお会いしました。ヨウコさんの心に受けた傷とそこからの回復のお話もすばらしいものでしたが、彼女が着ていたスーツも布といい仕立てといい、じゅじゅっとツバがわくぐらい素晴らしいもので(よい服を見たときって、こういう感覚になりますよね!)わたしははっきりいって、お話のあいだも彼女のスーツをじろじろ見ていました。帰りにハグもしてもらいました。あたたかい、血の通った、生きている人間ならではのハグでした。

YOKO INC.
231 Main st.Northampton,MA 01060

参考リンク先
Zonta Club of Northampton Area  
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