●vol.7 伴侶の目

 石ともは、バツイチです。
 離婚したとき、自分は、男の人と「家族」をするのは得意じゃないなと思いました。結婚したのは92年だったのですが、今となっては「いちばん大好きな男の友だち」=「結婚相手」というふうに結びついてしまっていた当時の選択肢の狭さを感じずにはいられません(それが社会的な押しつけだったのか、単なる自分の視野の狭さだったのかは今でも謎ですが)。とにかく、これからは「生活」はひとりでして、何人かの男の友だちとよろしくやっていければいい。そんなふうに考えていました。
 ところが、まったく予想外に、新しい伴侶を授かってしまったのです。へんなたとえですが、歳とって子どもできるって、こんな感じかなあと思いました。
 結局、ふたりで話し合って、籍は入れずに、同居だけすることに決めました。そういう生活を続けて2年目になります。

 新しい伴侶は、はじめ、服飾に関することにはまったく興味のない人でした。自分の服は、ジーンズ量販店でまず値段を見て買うというふうでしたし、わたしの着ているものもいいのか悪いのかわからないといった感じでした。わたしは、彼のそういう面をほっておきました。ものごとに直面する力や信頼関係をつくる能力の高さをかっていたし、他人に干渉するのは悪いクセだと、自分を反省しはじめたときのことでした。
 ところが、最近、彼が変わってきたのです。
 青山の映像製作会社に転職したというせいもあるかもしれませんが、着るものに、がぜん興味が出てきたみたいでした。「着る」ことって、面白いと思い始めたようのです。「以前は、『着るものにこだわりたい自分』というものに対して照れがあったかもしれない」とも。
 それはいいのですが、あろうことか、わたしの着ているものにも「好き」「きらい」をはっきりいうようになってきたのです。
 いくら、「自分の気持ちを大切にしよう」といっていても、この、伴侶のコメントというのは結構気になるのです。向こうが6つ歳下ということもあり、あまり老けてみられるのはイヤだななどと考えてしまいます。
 あまり向こうに合わせても窮屈なので、適当にやっています。

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