●映画のなかのソーイング(2)

 ソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」という映画では、神経過敏で抑圧的な母親が、娘たちの初めてのダンス・パーティに着ていくドレスを自分で仕立てるというシーンがあります。
 この家の4人の娘たち(いちばん下はすでに自殺している)はやっとの思いでボーイフレンドとパーティに行くための許可を母親から勝ち取るのですが、性的なものに対する不安感の強い母親は、娘たちがセクシーな服装をすることを容認できません。猫の首に鈴をつけるごとく、「全員色違いのお花のプリントの、手作りのワンピース」を着せて送り出すのです。娘たちは、ドレスの下に、思春期の爆発しそうなエネルギーを押し殺してパーティーに出かけていきます。表面から見れば母親が目を細めるようなかわいいワンピースを着た娘は、中にはいたパンツに、しっかりボーイフレンドの名前を書き込んでいるのです。
 ここでは、手作りのドレスは、「ダッサイ、しかも抑圧的」という文脈で使われています。「自分のために」服作りを始める前、わたしは、手作りの服というものに対して、たしかにこのイメージをもっていたと思います。そう思わないですんできた人は幸福かもしれませんが、わたしが感じていたことも決してわたしだけの感覚ではない、むしろ世界共通(?)の認識だったのか、と、ちょっと力づけられたのでした。ちなみに型紙は「シンプリシティ」のやつでした。

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