●vol.20 映画の中のソーイング 『A.I.』

 深夜のテレビ番組を見ていたら、「バスお宅」という人が出てきた。彼は、エンジンの音を聞いただけで、ミツビシの何型だとかヒノの何型だとかいうことを当ててしまうのだった。
 一度は司会者から、「間違いです」といわれても、「いや、そのフリップが間違っているはずです」といって、出題ミスまで指摘してしまうほどである。
 すごいな、世の中にはいろいろな人がいるな、でも、ああいう人ってちょっと怖いな、などと思いながらテレビを見ていて、でもなにぶん深夜テレビだから、それっきり忘れてしまった。

 ところが、先日映画『A.I.』を見ていたら、映画のなかにミシンが出てきた。主人公のロボット、デイヴィッドのホスト・マザーとなる女性・モニカは、家事にいそしむ主婦である。アメリカの家庭にはバスルームに続いて「家事室」みたいのがあるらしく、アイロン台やミシンまでが使いやすいように配置されている。
 映画なので深いことは追求しないが、このミシンはカバーがかけられず、なぜか後ろ向きに置かれていた。でも、それを見て、私は思ってしまったのだ。

「あ、あれ、ブラザーのやつだ!」

 私もいつのまにかじゅうぶんにオタクになってしまったらしい……。
(01.7.21)    

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